市民団体の多くが行事などをするとき、チラシを作って配ります。そのおまけのようにホームページにチラシを載せたりする時もあります。
あくまで紙に印刷したチラシが中心、ウェブはおまけという場合が多いです。
このやり方ではいつまで経っても組織に依存した取り組みになり、組織の外にいる人々に全く情報が伝わりません。
多くの人に情報を伝え、世論を広げて社会を良く変えていくためには、情報発信手段の中心を「紙の印刷物」から「ウェブサイト、ホームページ」などのネットを利用した手段に変える必要があります。
紙に印刷したチラシ中心の情報発信を行った時、どのようになるか
紙に印刷したチラシ中心の情報発信を行った時、だいたい次のような感じになることが多いです。
1 チラシを作る
講演会を開催し、その後デモ行進をすることに決めたとします。
このイベントを知らせるためのA4判のチラシを作ります。
イラストレータかワードか一太郎などのソフトを持っているメンバーがデータを作って、ネット通販の印刷会社に発注するかもしれません。
印刷会社に原稿を渡してデータ作成から印刷まで発注するかもしれません。
デザイン会社にデータ作成を発注し、受け取ったデータを印刷会社に渡して印刷したり、デザイン会社がデータ作成して印刷は外注して納品されるかもしれません。
印刷所に頼まず、自分の団体の事務所にある複合機でプリントアウトしてチラシを作ることもあるかもしれません。
手順は色々あります。
2 FAXとメールでイベント開催を関連団体に知らせる
いつも付き合いのある関連団体に、FAXやメールでイベント開催についてお知らせします。
「●月●日に講演会・デモ行進をすることにしました。チラシは現在作成中です。」
などと伝えます。
3 チラシを配る
印刷所からチラシが届いたら、自分の団体内で配ったり、関連団体に数百枚ずつ渡したりして、チラシを配り切ります。
この結果、自分の団体と、付き合いのある関連団体のメンバーにチラシが渡ります。
街中でチラシ配りをしてみたとしても、1時間配ってせいぜい100枚配れるかどうかです。
事実上、作ったチラシの99%は自分の組織と関連団体の組織内部の人に渡って終わることになります。
4 ホームページにチラシを載せる
チラシを作ったついでに、一応ホームページにも載せるか、という話になり、遅ればせながら自分の団体の公式ホームページにもチラシのPDFを載せたりします。
市民団体のホームページは何年も前に更新が止まっているようなものも多いです。
主催団体のホームページには行事の案内が全く載らず、付き合いのある別の団体のホームページに行事の案内が載ったりすることもあります。
あくまで力点は紙のチラシに置かれていて、ホームページはSEO(検索エンジン最適化)なども何も考慮せず申し訳程度にチラシなどを載せてあるだけなので、団体のメンバーではない多くの市民たちが目にするわけもなく、Webで情報が伝わることはほとんどありません。
5 イベントを開催する
イベントを開催します。
自分の団体と、付き合いのある関連団体のメンバーには紙のチラシが渡っているので、そのうちの何十人なり何百人なりが参加します。
自分の団体のメンバーでもなく、付き合いのある関連団体のメンバーでもない多くの市民にはチラシが届いているわけがなく、ネットでの情報発信もおまけ程度で手抜きな状態なので情報は届かず、みなイベント自体を知らないので組織のメンバー以外の多くの市民たちは誰も参加しません。
6 団体内で完結してイベントは終わる
イベントが終わります。
運営者側にとっては、チラシ作成、会場の手配、デモをするなら警察への届出、その他諸々の準備で非常に大変で、大いに運動の取り組みをした感じがします。
紙のチラシ中心の情報発信で、団体内部の人が集まり、講演を聴いて学び、デモで意見を主張しました。
団体外の多くの市民は、講演会の開催も全く知らず、デモをしていたことも知りません。
組織に依存し組織内部で完結するだけで、無党派層の人などに情報が届かず全く世論が広がらない
紙のチラシ中心の情報を発信をしても、自分たちの組織内部で完結する取り組みになるだけで、組織の外にいる人には全く情報が届いていません。
1000人が参加して大成功のように見えても、毎回組織内部のいつもの面々の1000人が参加しているだけならほとんど世論は広がっていません。
どこかの団体がデモを行うなら、その情報が関係団体にFAXやメールで流され、各団体の会員向けのニュースなどで「今度どこどこの団体主催でデモをします。」と伝えられます。
そのように、今現在何らかの市民団体や労働組合などのメンバーになっている人には政治や社会の問題や市民運動などの取り組みに関する情報が大量に届きます。
一方で、今現在市民運動などには取り組んでおらず、市民団体などのメンバーにもなっていない会社員、個人事業主、学生、年金生活者、労働組合に加入していない会社員の人々には、当たり前ですが全くそのような情報は届きません。
この結果、組織に依存して組織内部で完結してしまって全く世論が広がらない取り組みを繰り返すことになります。
社会運動などをしている組織と無関係な人々にしてみれば、組織化された人間たちが何かやっているなあ、とたまに感じるだけです。
これでは100年経っても戦争はなくならず富の不公平な分配も改善しません。
ネット中心に情報を流せば世論は広がる
紙のチラシ中心ではなくネット中心に情報発信をすると世論は広がります。
講演会なり学習会なりデモ集会なりをすると決めたら、チラシより先に自分の団体の公式サイトにそのイベントを案内するページを作ります。
ページを作ったら、SNSにリンクを貼ってイベントの案内の投稿をしてみます。
その内容に全く無関心な人には情報は届きませんが、多少関心のある組織外の人々に情報が届く可能性が出てきます。
組織外の人に情報を伝えて少しでも運動を拡大していく可能性はすべてこのウェブページに託します。
余力があるなら見栄えの良いチラシを作ってもよいでしょうが、余力がないならワードに文章を並べて写真の1枚くらい貼れば十分です。
紙のチラシは組織外の人に情報を伝えて運動を拡大していく効果はほとんどありません。
組織内部の人向けには今まで通り紙のチラシやFAXやメールで案内を流せば良いでしょう。
ホームページ/ウェブサイトはやる気があれば誰でも運営できる
様々な団体がたいそう良くできたチラシを毎度作ります。
かなり労力もかかり、金もかかります。
様々な団体が公式ウェブサイト運営には手間も労力もかけていません。
おまけ程度に運営して、気が付けば何年も前に更新が止まっていたりします。
紙のチラシを作る金と労力をウェブサイト運営に向けましょう。
今まで「紙のチラシ」に9、「ウェブサイト運営」に1の労力と金をかけていたなら、今後は「紙のチラシ」に1、「ウェブサイト運営」に9、という比率に変えましょう。
こぎれいなチラシを作ったり難しい要請書などの行政や議会向けの文書を作成したり裁判をしたり集会やデモの段取りをしたり講演会の講師の依頼をしたりという大仕事に比べたら、レンタルサーバーにWordpressをインストールして独自ドメインを利用してウェブサイトを作ってSEOなどを考慮してウェブサイトを作ってネット上で効果的に情報発信をすることははるかに簡単です。
現在ネットの情報発信が中途半端だとしたら、能力の問題ではなくネットの情報発信の効果を軽視して紙のチラシを重視していることが理由です。
我々の持てる力も時間も限りがあるので、ネットの情報発信に時間をさいて紙のチラシ作成は短時間で適当に終わらせる、というスタンスに変える必要があります。
参考